縫合糸関連性肉芽腫性炎症
避妊手術を実施する際に使用した縫合糸に免疫介在性に反応する疾患があります。
似たような病態として、卵巣遺残でホルモン性に子宮断端に反応、感染を起こすものもありますが、今回の症例は、前者の縫合糸関連性でした。
かかりつけ医さんで、1年以上前にOVHを実施されていました。卵巣動静脈結紮と子宮断端に反応、腫瘤形成が認められ、小腸狭窄が生じました。かかりつけ医さんでは、絹糸使用の可能性がありました。別の病院さんからの紹介を受け、当院で治療を実施しました。
縫合糸関連性の反応が疑われたことから、免疫抑制療法が行われ臨床徴候はコントロールが可能となり、外科的適応時期を見定めた上で、紹介来院されました。
当院でのCT検査では、小腸の狭窄、左腎臓の萎縮と左尿管の巻き込みも疑われました。体重が1.5kgない小型犬であるため、スライスの問題もあり、はっきりは言えないものの結腸や膀胱への癒着も疑われる所見でした。
実際の肉眼所見では膀胱、結腸の癒着はなく、左尿管も強くは癒着は起こっていませんでした。右尿管は全くもって無事。小腸は癒着が強く、子宮と小腸を一括切除し、小腸を端端吻合しております。狭窄があったことで拡張し弛緩してしまっている小腸の領域は切除することとしましたが、それでも回腸と空腸遠位では径の差が大きく、回腸を斜めに切断し、径をなるべく合わせ吻合を実施しました。また、卵巣領域の反応巣も摘出しております。
病理組織検査にて、やはり撚り糸の存在が明らかになり、絹糸の使用が大いに疑われました。
術後経過もよく、このまま免疫抑制療法は不必要になっていくことを祈りつつ経過観察となります。
絹糸の使用は、個人的な意見だけでなく、学術的にも使用するべきではないとされます。当院では使用しませんし、そもそも持ってません。研修医時代からそれなりにこうした症例の経験があります。さすがに10年前よりは減っていますが、まだ啓蒙の必要があると考えられます。


