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当院について

ごあいさつ

こんにちは。生まれ育った三河の地で「愛知動物外科病院」を開業させていただきました。

 

当院は、動物外科病院と馴染みの薄い名前を標榜しています。一般的な動物病院と異なり、骨折やヘルニアなどをはじめとした手術を中心とした治療を専門的に行っていく病院となります。

 

近年、動物医療の発展に伴い、一人の獣医師が全分野において貢献するには限界が生じてきており、各分野の専門家(スペシャリスト)が少しずつですが増えてきています。しかし、こうした時代の流れはいい面もありますが、動物の全体を診ることができなくなる畏れもあります。

私は大学時代に外科医になることを志しました。学生時代から外科だけでなく各分野との関連を理解する必要性を感じ、獣医学部卒業後、まずジェネラルな病院、そして大学病院内科で研修を受け基礎を構築しました。その後、母校の大学病院で腫瘍・軟部外科の研修医、助手を経て、整形神経専門病院で勤務医として外科の研修を受け、日本獣医麻酔外科学会の小動物外科専門レジデント課程を修了しました。これまで経験し習得してきたゴールドスタンダードな外科の技術、思考をこの地で還元したいと思います。

 

現代では、言葉を話せない動物はペットではなく、家族の一員、もしくはそれ以上の存在として迎え入れられております。そんな存在の動物たちを病気や怪我の苦痛から開放させてあげることを我々の任務と考え、診察を行っていきます。何がその子達にとって一番いい選択になるのか、飼い主様には分かりやすい説明を大切にし、共に考え、納得していただいた上で治療を行っていきたいと思います。些細なことでかまいません、ご相談いただければと思います。

 

また当院は二次病院としての役割も担っていきます。紹介いただいた場合は、かかりつけ医様と連携を取り、飼い主様、かかりつけ医様、当院の三者で大切な家族の治療にあたっていきたいと考えております。繰り返しになりますが、かかりつけ医様を通してでも、飼い主様から直接でも、ご気軽に相談いただければと思います。

獣医師紹介

院長 丹羽 昭博 NIWA Akihiro

経歴

酪農学園大学 獣医学部 獣医学科 卒業

2011年ファミリーアニマルホスピタル高橋動物病院 勤務医
2013年東京大学附属動物医療センター 内科系研修医
2015年酪農学園大学附属動物医療センター 腫瘍・軟部外科研修医
2017年酪農学園大学附属動物医療センター 腫瘍・軟部外科嘱託助手
2019年北海道動物運動器病院 勤務医
2021年愛知動物外科病院 開院
所属学会
日本獣医麻酔外科学会外科専門医レジデント研修課程修了
日本獣医がん学会腫瘍Ⅱ種認定医
研究発表・講演
2015小動物臨床血液研究会 顕微鏡ディスカッション 一般演題 シスメック賞受賞
2015日本獣医がん学会 一般演題
2015北海道三学会 一般演題
2015秋季獣医麻酔外科学会 一般演題 優秀賞受賞
2016春季獣医麻酔外科学会 レジデントフォーラム
2016北海道三学会 一般演題
2016秋季獣医麻酔外科学会 一般演題
2017春季獣医麻酔外科学会 レジデントフォーラム
2017JBVP 酪農大におけるトセラニブの現状を講演
2017秋季麻酔外科学会 若手獣医師によるベーシックセミナー
2018春季獣医麻酔外科学会 レジデントフォーラム
2018秋季麻酔外科学会 若手獣医師によるベーシックセミナー
2018アジア獣医外科学会 (AiSVS) 一般演題
2023若手のための縫合セミナー EDUWORD PRESS
執筆
2015 獣医がん学会雑誌 JONCOL ファームプレス
2018 VETERINARY ONCOLOGY no.17 Inter zoo
2018 VETERINARY ONCOLOGY no.19 Inter zoo
2018 VETERINARY ONCOLOGY no.20 Inter zoo
2019 VETERINARY ONCOLOGY no.21 Inter zoo
2019 VETERINARY ONCOLOGY no.22 Inter zoo
2020 犬の治療指針2020 EDUWARD press
2020 猫の治療指針 2020 EDUWARD press
2020 日本獣医麻酔外科学雑誌 優秀論文賞 「広範囲に変性した食道に対してネラトンカテーテルを型に管腔を再建した猫の1例」
2022 GO-VET no.20 学窓社
2023 SURGEON no.160 EDUWARD Press

症例紹介

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは、椎体と椎体の間にあるクッションである椎間板が、破裂し中身の椎間板物質の逸脱や、椎間板の突出により脊柱管内の脊髄が圧迫され神経傷害を起こす緊急性のある疾患です。歩けなくなり、さらに深部の痛覚を失ってしまうと回復率が下がります。早期の治療が大切になります。神経学的検査により原因となる部位を推定し、CT検査によって確定いたします。グレード3以上を手術適応条件と考えますが、保存療法でも痛みを強く伴う場合はその限りではありません。症状が長期化した分、回復も時間が掛かります。早期の治療が重要となります。また、当院では手術後もリハビリ指導を行います。自宅でできることなど術後の生活も相談して決めていきたいと思います。

骨折の治療目的は、適切な整復固定により骨折の治癒促進がなされること、周囲の軟部組織や骨自体の治癒により疼痛が消失すること、見た目の改善となります。そのためには骨癒合までの間、動きに耐えて初期固定を維持できる安定した固定法が求められます。原理原則に従いロッキング・プレートなどの固定法を導入して、良好な骨癒合を目指します。

軟部組織肉腫は、血管周皮腫、末梢神経鞘腫などを含めた腫瘍の総称を示す。一般的に局所浸潤性が問題となり、狭いマージンでは再発することがある。病理組織学的にはGrade分類され、分化度や壊死範囲、核分裂頻度で判定される。Gradeが高いと転移を起こすことも示されている。Gradeが高いほど再発率の高いことも示されている。 基本的には肉眼的病巣がすでにある場合は、化学療法や放射線療法は効果的ではなく、外科療法が適応となってくる腫瘍である。 マージンを広く含むことで機能障害や皮膚の欠損が大きくなるなどの問題が生じる。 腫瘍の再発を防ぐことがより大事であるのか、機能を残すことが大事であるのか。ケースバイケースであり獣医師としてのシビアな考えが必要となる腫瘍であると考えている。 また皮膚欠損のリカバーは、獣医外科医として、その知識・技能・経験が問われる分野である。主要皮動脈の正確な血管走行、皮膚の緊張方向の知識をはじめ、ドレーン技術、減張の技術、術後のマネジメントなど、この分野は簡単ではないと思っている。多くの知識・経験を指導医のもとで受けていくべきである。

胆嚢内にムチンを主成分とする濃縮した胆汁が蓄積する特異な疾患であり、犬においてしばしばみられる。無症状で進行し、末期で胆汁性腹膜炎や総胆管閉塞を起こすと強い症状を呈する進行性の疾患とされる。症状が出現している場合はすでに末期の状態と考えられます。外科的に胆嚢を摘出し総胆管の開通を改善させ、併発する胆管肝炎の治療も期待できます。

膝蓋骨内方脱臼は、どのワンちゃんたちでも認められるが小型犬で多く発生する病態である。膝蓋骨いわゆる「お皿」が、大腿骨滑車から内側に脱臼してしまう。幼少期から認められる場合も多く、この場合は成長段階において、大腿骨や脛骨の変形を起こしてしまう。また外傷性に発生した場合は、発生時には強い疼痛が伴う。どの状況であれ、放置すると軟骨の損傷が生じ、また変形性関節症を引き起こし慢性的な疼痛が生じてしまう。それだけでなく、前十字靭帯断裂のリスクも高めてしまうことから、早急に対処が必要になってくる。 グレード評価(1〜4)が可能であり、手術適応の判定や予後に関して予測ができる。できるだけグレードの低い段階で対処していくべき病態である。

椎間板ヘルニアは胸腰部だけでなく、頚部でも発生します。頚部の場合は、頭側よりでは痛みがより顕著であり、尾側よりでは呼吸への影響がより顕著であることが示されております。Grade分類もされておりⅠ〜Ⅲで評価します。 頚部椎間板ヘルニアでは、頚部の病変でも後肢への影響も認められることがあります。 今回、神経症状は出ていないものの内科療法では改善されない強い痛みがあっため、外科療法適応と判断しました。CT検査、他施設でMRI検査を実施し、C 2-3とC6-7のVentral Slotを実施しております。 手術後は、問題なく改善し術後4ヶ月現在再発もなく、痛がることもなく過ごしております。

肺の腫瘍は、画像診断精度の上昇により、より適切な手術が可能になった腫瘍である。 肺の腫瘍は、腺癌、腺扁平上皮癌、組織球性肉腫や様々な転移所見として認められる。原発性肺腫瘍であった場合、外科的治療が適応となってくるが、原発性肺腫瘍であっても、リンパ節転移の有無、大きさ、発咳の有無でも予後が大きく変わることが示されている。特にリンパ節転移があると予後が大きく悪化する報告がなされている。 肺は50%以上の切除により、機能不全に陥り死亡してしまう。切除が可能であるかは、CT画像検査によって、腫瘍の浸潤具合からも判断する。ワンちゃん猫ちゃんの肺は、肺葉として幾つかの袋に別れている。このため肺葉切除をすることで完全摘出が可能となってくる。 摘出組織の大きさにもよるが、一般的には肋間切開にて対応する。葉によっては肺間膜を切開し、肺動静脈や気管支を適切に処理し、摘出する。摘出後は胸腔ドレーンを設置し、閉創後の気胸を管理する。摘出組織が大きい場合は、再膨張性肺水腫など合併症に気を付けてチューブを管理する。 病理組織検査を実施し病変の取り残しがないか、そもそもの組織の診断を受け、追加治療を検討していきます。 リンパ節転移がなく、取り切れた肺腺癌は、おおよそ予後は良好と考えられます。肺内転移を含めて定期的な転移チェックを術後は行なっていく予定となります。

猫注射部位肉腫は、以前は白血病ワクチンなどに含まれるアジュバントが発症の原因とされ、ワクチン関連性肉腫と呼称されていた時期もあったが、発症の原因がワクチンに限らないことから注射部位肉腫と変更された。 腫瘍の性格は非常に悪く、最大級に組織浸潤性が強く肉眼的には辺縁マージン5cm、底部マージンは筋膜を2枚確保しての摘出が推奨されている。底部を綺麗に筋膜2枚を均一に確保することは困難であり胸椎棘突起も一括切除する必要性もあるなど手術はかなりのマージンを確保しないと再発が懸念される。 近年では、CT画像からの浸潤評価によって組織浸潤性をより細かく評価することで手術計画がより詳細にできるようになってきている。 本症例は底部は僧帽筋、菱形筋、棘突起まで一括切除した。術後は、歩行障害が生じたものの徐々に改善が見られ術後1年以上経過しても再発は認められていない。完全切除できれば2年生存率も80%以上と長期生存が期待できる腫瘍である。

猫ちゃんの陰茎尿道は径がかなり小さく、結石やデブリスで尿道閉塞を起こしやすい部位となります。尿石症や間質性膀胱炎がベースにあるので、閉塞解除後は原因を追究し、その治療が必要となります。治療の甲斐がなく、ここで何回も閉塞を起こしてしまい、閉塞解除を何回も実施していると尿道に線維化がおき更に恒久的に狭窄してしまい、外科的な処置が必要となります。 ここで有効な外科処置が「会陰尿道造瘻術」です。 以前は、この術式は皮膚と尿道粘膜を縫合する方法であったことから皮膚が引っ張り込まれることでの再狭窄、裂開、皮膚炎が問題となっておりました。最近では、包皮粘膜を利用し、尿道粘膜に縫合することで狭窄を予防する方法が拡がり実施されています。それでも報告によると1、2割は再狭窄が起きていることが報告されています。 巷ではこの手術は広く知られている様ですが、簡単ではなくデータがいまだに少ない世界的に術式が確立されていません。術式の基礎たる解剖の知識がないまま実施され合併症を引き起こしている例も散見されます。合併症が出るとかなり状況が悪く、できる限り自然なままで機能を取り戻してほしいと考えています。 その考えのため当院では原則1回の尿道閉塞で、すぐに手術を勧めることはしません。また尿道閉塞解除のためにトムキャットカテーテルは使用しません。 猫ちゃんの尿道閉塞を繰り返し、会陰尿道造瘻術をお考えの方はご相談いただければと思います。

動物の寿命が伸びていることで、死因として増加しているのは腫瘍疾患です。腫瘍と一言で示していますが種類によって良性もあれば悪性もありますし、その中でも多様な挙動をとります。手術だけでなく、抗がん剤、放射線療法(他施設)、分子標的薬療法を用い、その子その子にとって最良と考えられる治療は何なのか、飼い主様とともに考え、実施していきます。 必要な場合は、詳細な腫瘍の浸潤や血管との関連性を確認するために、造影剤を用いたCT検査を行います。手術計画に大きく貢献し、より安全で迅速な手術に繋がります。

若齢の猫ちゃんで、鼻咽頭ポリープが外耳道を占拠。外耳炎と内耳炎を発症していた。 外耳炎の治療も考慮し、両側外側耳道切除術+ポリープ引抜き術にて治療。病理組織学的診断で炎症性ポリープと診断された。 鼻咽頭ポリープは、耳管または中耳で発生し鼻咽頭に本体を置くか、外耳の方へ出ていくかになる。今回は両側外耳の方へ伸展してきた為、外耳炎、中耳炎が発症したと考えられる。 術後感染コントロールしながら、ステロイドの使用が再発率を下げると示唆されており、本症例も使用し、数週間の使用で休薬した。定期的に検診し、現在までに外耳炎、中耳炎の徴候は認められていない。        

斜頸など前庭疾患により姿勢維持の困難を主訴に来院され、CT検査で明らかな鼓室包の破壊が認められました。内耳の損傷だけでなく頭蓋内への浸潤も認められた状態でした。 外耳道には大きく異常はなく、侵襲性など総合的に判断して腹側鼓室包切開術を実施しました。 髄液漏出は致命的であるため、細心の注意を払い、内容物を裏打ちされた辺縁を丁寧に剥離し除去しました。 術後の神経徴候は悪化はなく、術後2ヶ月で徐々に神経徴候の改善が認められている。

肝臓腫瘍は、大きさが全てではなく、門脈-動脈-胆管の走行、静脈の走行と位置関係が把握できれば手術にて摘出することも可能です。この走行を認識するには造影CT検査が必要となりますが、これにより血管の走行や腫瘍との関係性も判断できるため綿密な手術計画が立てられ、できるだけ安全な手術ができるようになります。難しいと避けられがちな肝臓の手術ですが当院では、大学病院での多くのCT読影、手術、経験を生かし、出来る限り安全な、時に必要ならば積極性のある手術が実施可能です。セカンドオピニオンにも対応いたしますので、お問い合わせください。

膝関節内の前十字靭帯が、外傷または変性により損傷してしまう病態を示します。脛骨の前方変位や内旋の制御ができなくなり疼痛を示します。現在は小型犬から大型犬までTPLO(Tibial Plateau Leveling Osteotomy)という前方への変位を制御することで疼痛を抑えることができ、術後合併症も少ない安定性が高い術式を採用しております。

股関節脱臼には背側脱臼と腹側脱臼に大きく分かれます。 腹側脱臼であれば、整復後特殊な足枷のような外固定を設置して保存的療法で治療します。 背側脱臼であれば、外科的治療が選択されます。当院では、より低侵襲で行える、経関節ピンニング法をFirst Choiceとしています。

関節固定術はいずれにおいても、強固な固定、設定された角度、海綿骨移植、確実な関節軟骨の除去が必要である。足根関節固定術は脛骨-中足骨角度が135度と設定されており、この症例も正常側でも同様の角度であった。来院された際、かかりつけ医での手術後にインプラントの固定は崩壊しており、感染徴候とSIRSを示し全身状況も良くない状態で来院されました。 細菌培養・薬剤感受性検査を経て抗菌薬療法を実施したのち、足根関節固定術を実施いたしました。 ・ロッキングシステムを選択し、LCPは長めに遠位に4箇所、踵骨にもスクリューを挿入、中足骨にも2本はスクリューを挿入する設計 ・上腕骨大結節より海綿骨を採取し、足根関節の軟骨を掻爬 ・インプラントを固定し、海綿骨移植を実施 術後半年を経過していますが、跛行もなく良好に維持できております。

門脈という肝臓に入る血管が異常な血管(シャント血管)によって肝臓へ戻らず別の心臓に戻る静脈系の血管に血液を回してしまう病態である。本来は肝臓で解毒されなければならないアンモニアなどの有害物質がシャント血管を通って全身に回ってしまい、発作などの症状がみられます。先天性の場合は若齢のヨークシャテリアなどに多く発症します。発育が悪く体が小さいことが特徴です。後天性の場合は、肝線維症など肝硬変状態となることで発生します。症状はまったくないものから、発作がみられるものまで様々です。診断は血液検査やCT検査で診断します。治療は先天性であれば手術でシャント血管の閉鎖を目指します。結紮後発作など術後の合併症については注意が必要です。

主にシュウ酸カルシウム結石が尿管を閉塞させ、腎後性に腎機能不全を生じさせます。治療が遅れてしまえば死に至る病気です。腎臓は2つあり一方だけの障害の場合は、軽微な症状で気づけないことがあります。もう1方の腎臓も機能障害を生じてしまう場合は重篤な状態となります。早期に状態を安定化させ閉塞を解除する外科的処置が必要となります。

肛門周囲の筋肉が萎縮してしまい、腹腔内臓器が肛門周囲の領域に出てくる病気です。排便障害が生じ、慢性化すると、外科的整復後、直腸脱を起こすこともあります。会陰ヘルニアの原因には性ホルモンの関与が主に考えられており、未去勢のオスで発生が多い疾患です。人工材料に頼らない術式で実施します。

食道内は内視鏡によって摘出を試みますが、穿孔がある場合などは早急な外科的処置が必要です。また食道内にあっても胃に押し込んで胃切開を必要とする場合もあります。胃内異物は胃炎や幽門の通過障害などを引き起こし、胃を越えて小腸で閉塞を起こすこともあります。紐状の異物の場合は、腸管が広範囲に損傷してしまう場合もあります。いずれにしても犬や猫で生じ、早急な対応が必要となります。 画像は内視鏡実施時の胃内の異物を示している。催吐処置では吐ききれず、麻酔下で内視鏡を実施することとなった。マスクの鼻止めや毛が固まって存在している。無事内視鏡鉗子を用いて異物を除去する事ができた。