尿管結石

掲載日:2022.11.09

冷え込む時間が日に日に増えてきたこの頃、泌尿器疾患が増えております。特にワンちゃん猫ちゃんの尿管結石をよく診察します。

猫ちゃんでは特に無麻酔CTで診断や手術計画は可能であり、ほぼ全症例で実施しています。レントゲンやエコーよりも確実性があり、周囲組織との関連や結石の数、位置が把握可能です。

単純に結石が尿管を閉塞させ、水腎症を起こし手術で尿管切開で結石を取り除くといった分かりやすい経過をたどることは非常に少なく、複雑な病気である思っています。尿管はとにかく内腔が細く、拡大鏡が必要で手術の難易度を上げ、さらに尿管の炎症、線維化で閉塞を起こし、これもまた問題となります。

最近では、ACVIMでも猫の尿管結石の治療としてfirst choiceにSubcutaneous Ureteral Bypass (SUB)が示されていますが、人工物であるため、当院ではなるべく避けたいと考えています。そのため、尿管切開、尿管端々吻合、新尿管膀胱吻合を優先して考えています。そして、どの手術でも必要となるのは腎瘻チューブです。世界的なコンセンサスは得られていない様ですが、腎瘻チューブ設置は人工物ではあるものの確実に1週間ほどで抜去するものであり、この設置は何より多くの恩恵にあずかります。尿管の縫合によって術後炎症が生じ、尿管が狭窄した際の尿の迂回ができる点、またそれにより多くの尿や圧力に晒されずに創傷治癒にできる点、術後リークチェックができる点など挙げられます。設置は低侵襲であり、抜去時に麻酔も必要ありません。細かい工夫は必要ですが、経験があれば時間も掛かりません。

昨今、尿管結石症が増え、私が学生の頃は、大学病院で見た覚えがない程のものでした。そのため、まだまだ知見に乏しい分野かも知れませんが、細やかな手術が必要なこの分野は、日本人が得意とする分野であると思います。治療法、予防法の更なる発展を願い、臨床を通じて寄与していければと思います。

 

愛知動物外科病院