股関節脱臼について
掲載日:2022.06.23
股関節脱臼は、大きく背側脱臼と腹側脱臼に分類され、背側脱臼である場合に外科的処置が必要となります。背側脱臼の外科療法は、現在までに様々な治療法が考案されていますが、これがベストという方法が定まっていません。
ただ、背側脱臼=切除関節形成術(関節を無くしてしまう方法)という考えは、少し乱暴であると思います。機能する可能性が残されているのであれば、関節はできるだけ残したいと考えております。
多くの報告、経験からトグルピン法、関節包形成術などが成績の良いものとして挙げられ、現在、日本でも行われ始めています。これらの手術法は開放式であり、それなりの侵襲性を伴います。
ただ当院では、Cアームを持っていますので皮膚切開だけでの低侵襲な方法として経関節ピンニング法をfirst choiceとしております。以前、修行させていただきました勤務先で実施していた方法で、低侵襲ながらの成績の良さを実感しておりました。もちろん症例によって制限はありますが、当院でもこの方法を実施しております(写真は、術中のCアーム所見)。
獣医外科の成書であるTOBIASのVETERINARY SURGERY SMALL ANIMALにおいて経関節ピンニング法は結腸の損傷やインプラントの破損といった合併症よりあまり推奨されないとの記載がありますが、そもそものピンのサイズの選択ミスや盲目的なインプラントの挿入が問題であり、Cアームや適切なピンのサイズの選択によりピンの破損や結腸損傷など経験したことも見たこともありません。
いきなり切除関節形成術を選択するよりは、実施する価値のある手術方法と考えております。もちろん経関節ピンニング法が適応できないケースもあります、その子、その子にとって一番苦痛が少ない治療法を選択できればと思います。
愛知動物外科病院